ケロイド

ケロイドkeloid[Alibert 1814]

 〔症状〕境界明瞭な,扁平隆起性~半球状隆起で,鮮紅~紅褐~褐色,徐々に側方に進行するとともに,中央部はしばしば退色扁平化し,あたかも餅を引き伸ばしたかのような像を示す.初めの外傷部位の範囲を超えて増殖し圧痛はないが,横から強くつまむと痛いことが多く〔側圧痛〕,この点,肥厚性瘢痕と異なる.ときに 痒あり.下床に軟骨・骨のある部位に好発し,前胸・顔面・上腕・背部に多い.明らかな誘因なく発するのを特発性ケロイド,外傷・熱傷などの瘢痕から生ずるのを瘢痕ケロイドと分かつが,前者には気付かぬ小外傷(microtrauma)が必ず存在し,区別すべきでないという考えも強い.前胸部に左右帯状に,前胸・背・頬顎部の座術後に多発性に,上肢伸側の種痘後に生ずることが多い〔付図26-29],

 〔病因〕何らかの外傷が関与.ケロイド素因も確かにあるが,それも年齢・部位により1個人においても変動する.

 [組織所見]真皮中深層に波状~渦巻状に膠原線維が増殖し,小血管がその内に新生,基質には酸性ムコ多糖類が増加する.

 [治療]①切除後X線照射,②X線照射単独,③ステロイド軟膏ODT,④圧迫包帯,⑤ステロイド局注

   〔付1〕肥厚性瘢痕hypertrophic scar との関係:これは外傷部位を越えて周囲に拡大せず,隆起・紅色調も少なく,側圧痛もなく,膠原線維増殖が表皮直下にまで及んでいる点などでケロイドと異なるが,本態や治療の点では,ほぼ同じと考えられる.

   〔付2〕瘢痕cicatrix, scar, Narbe : 創傷・潰蕩・膿瘍・炎症などのあとに生じ,皮膚欠損を膠原線維の増殖で補填したもので,表面に皮野形成と毛孔とを欠く.組織学的に表皮菲薄,乳頭間突起の消失,膠原線維の増殖,弾力線維の消失,付属器の消失をみる.通常皮高に一致するが,ときに隆起〔肥厚性瘢痕(hypertrophic scar)〕,ときに陥凹〔萎縮性瘢痕(atrophic scar)〕し,また引きつれとなる〔瘢痕性拘縮(scar contraction)〕.

 〔付3〕reactive nodular hyperplasia〔Say lan 1971〕:中年以降手・指一口腔・足に生ずる直径1 cm ほどの,平滑,弾性硬,半球状隆起の結節で,線維芽細胞の増加と膠原線維の増殖をみる.血管増生はない.小外傷に対する反応か.

side memo

 ケロイドは人種差が著しい[黒人>東洋人>白人].アフリカ黒人の一部に,装飾の目的で刀で顔面に種々の模様の切傷を作り,それがケロイドとなることで奇怪な顔貌をなしているのは,あるいは写真でみたことがあると思う.黒人に多いのは始終外傷にさらされているためとの説もあるが,それだけでは説明かっかず,やはり人種的差異はあるように思われる.