臨床実習結果の評価法

 評価結果は実施目的によって処理されるもので、結果のだし方もその目的によって異なってくる。たとえば、学習者の評価では、事前的評価であれば学習者の学習背景が概略的にとらえられればよく、形成的評価では学習内容にそってできるだけ個別的に詳細な到達状況がわかるような結果をだし、総括的評価では合格か不合格かが決められるような結果をださなければならない。これらのうち、事前的評価と形成的評価では、その結果をあるがままにできるだけ内容にそってだせばよいが、合格か不合格かを決定する結果をだす総括的評価では、その方法に関する考え方を明確にしておかなければならない。

 看護教育では、科目ごとに合格・不合格の認定がなされるので、科目終了時にそれを認定できる結果をだす必要がある。その意味では到達度評価をしていることになるが、評価結果の処理にあたっては、次のようなことに留意しなければならない。

〈実施上の留意点〉

・教育の計画を立てる時点から、最終的に期待する目標を明らかにし、その内容に対する結果のだし方を考えておく。ことに、多くの領域を含んだ担当教師が複雑になる科目では、計画時点から評価計画を立てておかなければならない。

・目標に対して絶対(的)評価するのか、相対(的)評価による解釈をするのか、内容によってその判定のしかたを考えておく。実際には、認知領域および精神運動領域に関する内容では目標に照らして絶対評価による解釈を取り入れる場合もあろう。

・科目終了時の試験の合格ラインを60点とする学校が多いが、評価にあたっては60点の意味を明らかにしておく必要がある。たとえば、基礎知識として重要なものには100%の到達度を要求し、問題解決力や応用力、発展目標ないし向上目標に関する一部の内容では60%でよいというように、内容による重みづけをする。看護技術として取り上げた内容に関してはすべて100%を期待するようにする。しかし、その対象とする内容は、事前に十分検討して選ばれたとしても、その妥当性を証明することはなかなかむずかしいので、結果はいくっかのブロックで幅をもたせて解釈する必要がある。

 ・学習者による自己評価を合格・不合格の認定に用いる評定の参考資料にしてはならない。

 上記の留意事項のなかで実際に最も問題となるのが、成人看護学のような多くの領域を含んだ時間数の多い科目と、校内における講義などによる理論の学習と臨床実習の評価との関係である。校内における理論学習と臨床実習が別立ての科目であれば、その評価は別々になるが、看護教育における評価の視点から考えれば、両者が密接な関係にある点を重視しなければならない。臨床実習と直接関連のある理論の学習は、いわば臨床実習における学習を最終目標とした学習の途上にあるもので、ある意味で形成的評価の対象となる段階での学習なのである。したがって、それぞれの教授・学習過程で理論と実習との関連性を常に意識した試験を行い、両者の遊離を防ぐように心がける。さらに、一つの科目で担当者が多くなった場合の処理のしかたとしては、配分され九時間数による比率で換算する場合と、最初からそれぞれの領域における問題数を必要な内容との関係で設定しておく場合が考えられるが、この二つの方法では、後者がより望ましいであろう。

 臨床実習の評価については、まず評価の対象とする科目の設定のしかたを考えなければならない。指定基準で考えれば、基礎看護学・成人看護学・老人看護学・小児看護学・母性看護学の実習となっているが、第4章で述べたようにそれらをさらに小区分して、それぞれに評価することも可能である。