抗精神病薬はどのくらいの期間続けなければならないのでしょうか?


 同じ量の薬を摂取しても患者によってその血中濃度にいちじるしいバラツキがあることからすれば、薬への反応にもまた顕著なバラツキがあることもうなずけます。一方には、薬が投与されて四八時間以内に劇的な反応を示す人がいれば、他方には数ケ月かかって非常にゆっくりと反応する人もいます。ニューヨークのジェフリイーリーパーマン博士らは初回入院の統合失調症患者について、その治療反応性を調査した結果、投薬開始から臨床上最良の改善までの平均期間は三五週ですが、半数の患者は一一週で到達しかと述べています。このことは、一部の人は速やかに反応するものの、残りはもっと長くかかることを示しています。統合失調症の治療には忍耐が肝要なのです。

 それではどのくらいの期間、薬を継続する必要があるのでしょうか。最初の統合失調症の病相を経験し回復すれば、その四分の一は再び病気になることはなく、薬は必要としないことがわかっています。誰がこのグループに入るのかを確定する方法は今のところありません。したがって、回復の後二~三週間かけて投薬量を徐々に減らし、その後に中止することが奨められます。

 再発する四分の三には薬物治療が再び必要になります。このグループに対しては、その回復の後数ヶ月は薬を継続すべきでしょう。三度目の悪化が見られたら、数年は薬を持続する必要があります。そこで、私は患者にインシュリンの必要な糖尿病患者と同じなのだと伝えることにしています。つまり、第一回のエピソードには数週間、二度目のものには数ヶ月間、そして三度目のものに対しては数年間の薬の持続投与が必要になるということです。

 患者が年をとれば、薬を減らし、最終的にやめることはできるでしょうか。多くは四〇代あるいは五〇代で可能となり、六〇代になればほとんどでやめることができます。通常、年をとればとるほど、抗精神病薬の必要量は少なくてすみます。