咽頭炎・扁桃炎を徹底解説

 咽頭および扁桃の炎症は同時に認められることが多く、扁桃を含めた咽頭の炎症を咽頭炎といい、扁桃に限局して強い炎症所見(扁桃の発赤、腫大、滲出物の付着など)を認める場合を扁桃炎と呼ぶ。急性鼻咽頭炎(普通感冒、かぜ症候群)を含めて、喉頭より上部の炎症を総称して急性上気道炎と呼んでいる。これらは日常診療において、もっともよくみられる疾患である。

 病因の多くはウイルス性と考えられている。アデノウイルス、パラインフルエンザウイルス、インフルエンザウイルス、コクサッキーウイルス、RSウイルスなどがおもなウイルスである。細菌ではA群β溶連菌によるものが多い。黄色ブドウ球菌、肺炎球菌、インフルエンザ菌なども咽頭より検出されるが、起炎菌とは考えられない場合が多い。咽頭ジフテリアも重要な疾患であるが、今日では予防接種の普及もあり、ほとんどみられなくなった。

 咽頭炎のおもな症状は発熱と咽頭痛である。頸部リンパ節の腫脹をともなうこともある。咽頭粘膜全体の発赤を認める。扁桃炎では口蓋扁桃の発赤・腫脹とともに、しばしば黄白色の小膿栓や白苔・偽膜を認める。ヘルパンギーナ咽頭結膜熱、麻疹、伝染性単核球症(EBウイルス)など特有の咽頭所見や臨床症状を認める疾患もある。


1……診断

1)診断は臨床症状および咽頭・扁桃所見によりなされる。

2)細菌が原因と考えられる場合は咽頭培養を行う。A群β溶連菌迅速抗原検出キットなども短時間で判定が可能で有用である。A群β溶連菌とウイルス性咽頭炎の鑑別は臨床所見からは容易でないことが多い。病因診断として一般的ではないが、咽頭ぬぐい液などからのウイルス分離、ウイルス抗体価の測定が行われることもある。

3)合併症の有無や全身疾患の鑑別などのために必要に応じて血液検査などが行われる。細菌性の場合、白血球増多、血沈の亢進、 CRPの陽性イ匕をみることが多い。溶連菌感染症ではASO、 ASKなどの抗体価の上昇が参考になる。


2……治療

1)対症療法:安静、水分補給、消化のよいもので栄養補給をはかること。発熱・咽頭痛に対して解熱鎮痛剤の使用。口腔内清潔のためにうがいなどを励行する。

2)細菌性と考えられるものには抗生剤の投与を行う。A群β溶連菌の場合、通常ペニシリン抗生物質の約10日間の投与が行われる。急性糸球体腎炎やリウマチ熱を続発することがあるため、約2~4週間後まで検尿や診察を行い経過観察を行う。

3)扁桃摘出術の適応については、小児期では生理的に扁桃肥大になるので、適応の判断をする。①反復性扁桃炎(年5~6回以上発症する)、②急性腎炎、リウマチ熱などの急性増悪の病巣となる場合、③滲出性中耳炎、反復性中耳炎、扁桃周囲膿瘍、咽後膿瘍などを認める場合、④呼吸障害、嚥下障害、構音障害などを認める場合などが適応と考えられている。

 

観察のポイント

○「かぜは万病のもと」といわれている。乳児や基礎疾患をもつ小児では全身状態の悪化をともないやすく、下気道感染や二次的な細菌感染により重症化することもあり注意を要する。また、咽頭・扁桃の異常所見を白血病や無顆粒球症などの全身疾患の部分症状として認めることもある。

 

入院治療中の観察のポイント
急性上気道炎のおもな原因はウイルスによるもので根本的な原因療法はなく、患児の全身状態に合わせた対症療法が主体となる。一般的な看護として、安静・保温を保つこと、水分補給、消化のよいものでの栄養補給をはかることなどが大切である。

発熱に対する母親の不安は強いが、熱を下げることが必ずしも治癒を早めるとは限らないこと、発熱は病原体に対する生体の防御反応のひとつであること、40°C以下の発熱のみでは中枢神経系の障害を起こすことはないことなどを理解したうえで、母親への説明を行う。


むやみに解熱剤を使うべきではない。発熱のために不穏・興奮が強くて安静が保てない場合や衰弱の激しい場合(特に心疾患などの基礎疾患のある場合)などに対症的に最小限に解熱剤投与を行う。

熱性痙攣を起こしやすい患児には、予防的に抗痙攣剤の投与をしておくことも必要である。