『急性膵炎』

 小児では膵炎はきわめてまれな疾患で、大部分は急性膵炎である。成人と異なり、外傷性・薬剤性の膵炎が多い。膵臓より遊離するリパーゼにより膵周囲組織の壊死をきたす。トリプシンはホスホリパーゼA2を活性化し、肺サーファクタットの減少を引き起こす。そのほか膵出血、 DICなどを引き起こすことがある。主な症状は上腹部痛、嘔気、嘔吐で、ショック状態で発疱する場合もある。外傷性膵炎では仮性膵嚢胞を合併することがある。慢性膵炎はさらにまれな疾患で、報告例のほとんどが家族性(遺伝性)膵炎である。糖尿病へ進行する例もある。

感染症:ウイルス(ムンプス、コクサッキー、エコー、 EB、麻疹など)、マイコプラズマなど

膵胆道系疾患:先天性胆道拡張症(膵胆管合流異常)、胆石

全身疾患:川崎病膠原病、アレルギー性紫斑病、溶血性尿毒症症候群

外傷:腹部打撲、 ERCP後

薬剤:L-アスパラギナーゼ、ステロイド、 FK-506、バルプロ酸サリチル酸など

その他:腫瘤、特発性


診断と治療

1……診断

 小児科でのルチーツの検査ではアミラーゼの測定が組み込まれていないことが多く、急性腹症のスクリーニングでも見逃されることがある。血・尿アミラーゼの上昇があれば膵炎を疑う。アイソザイムでは膵型アミラーゼが増加する。画像診断では超音波検査MRIの進歩がめざましく、 ERCPは必ずしも必要でなくなってきている。
   
急性膵炎臨床診断基準
(特定疾患難治性膵疾患調査研究班)
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①上腹部に急性腹痛発作と圧痛がある
②血中、尿中に肝酵素の上昇が認められる
③画像で膵に急性肝炎にともなう異常が認められる


2……治療

 急性膵炎の治療の基本は、膵分泌抑制(絶食、胃液吸引、H2ブロッカー)である。安静、輸液による電解質補正、疼痛への対策なども必要である。重症化した例では抗酵素剤(FOYなど)、 DICに対する治療を行うが、外科的ドレナージを要することもある。外傷性膵炎で仮性膵嚢胞が拡大するような場合にも、ドレナージが必要となる。

看護ポイント

軽症の膵炎は急性胃炎などとして見逃されている場合もあると思われる。重篤感のある上腹部痛の場合、アミラーゼを測定することが重要である。腹部打撲や使用薬剤など、正確な病歴聴取が診断の手がかりとなることがある。

急性期に膵液分泌を抑制すること重要で、絶食や胃液吸引などの管理を厳密に行う。回復期には低脂肪・低蛋白食とする。重症例ではショック状態に陥りやすい。循環不全など全身状態の的確な評価が重要である。