尋常性湿疹の症状、組織所見、発症機序、治療法

 湿疹の大部分がこれに属し、臨床形態の明らかに特徴的な内因性湿疹・脂漏性湿疹・ビダール苔癬を除外、さらに接触性機序の明らかな接触皮膚炎を除外した、残り両すべてがこの尋常性湿疹(eczema vulgare〔Halter 1941〕、 ordinary eczema)である。この中の急性型の1つを接触皮膚炎と称する考え方もあるが、むしろ本型のうち接触性発症機序の明らかとなったものを接触皮膚炎として選び抜き出すと考えた方が良い。尋常性湿疹は未整理の籠の中に残った湿疹の集まりといえる。

 〔症状〕湿疹三角形に示された各像をとり、それぞれ紅斑性・丘疹性・小水疱性・膿疱性・びらん性・結癇性・落屑性湿疹(eczema erythematosum、 papillosum、 vesiculosum、 pustulosum、 madidans、 crustosum、 squamosum)という。以上の各期を示すものをまとめて急性湿疹(eczema acutum)といい、初期はこの急性湿疹の像をとるが、苔癬化し、浸潤を触れ、滲出傾向のない局面を主体とするものを慢性湿疹(eczema chronicum)という。実際上は尋常性湿疹という診断名を用いることはなく、この急性・慢性湿疹という語を用いる。それはこの表現の方が臨床像が具体的に浮かび上がり、また治療法も分けられるからである。またこの群に属するもので、2~3特有の所見あるいは発症機序より、次のような名称を与えるものがある。膿癇疹性湿疹fe。 impetiginosum)〔膿疱・結癇の著しいものr〕、汎発性湿疹{e。 universale)〔全身汎発〕、毛疵性湿疹(e。 sycosiform司〔須毛部に限局〕、間擦性湿疹(e。 intertriginosum)〔閧擦部に湿借l生病変〕、貨幣状湿疹(e。nummulare)、局面性〔斑状〕湿疹(e。 en plaques)、自家感作性皮膚炎、汗疹性湿疹(e。 sudaminosum)、汗貯留症候群〕、亀裂性湿疹(e。 rhagadiforme)〔耳後・手掌足底で亀裂の著しいもの〕、胼脂性湿疹[e。 tyloticum )[手掌足底で限局性肥厚を伴うもの]、苔癬化湿疹(e。lichenificatum)、現状湿疹(e。 verrucosum)。

 〔組織所見〕急・亜急・慢性の各型。

 〔発症機序〕Halter らのいうようにその多くは接触アレルギーであろうが、その根拠特に接触原の把握されぬゆえにこのカテゴリーに残されている。

 [治療]①軟膏療法、②全身療法〔抗ヒ剤・消炎剤・ビタミン・食餌など〕。
 

Atopyの語源

 topicとは正常の位置にあるものとの謂で、 atopicとはその否定形になる。 Cocaはアナフィラキシーならば何らかの前処置があって生ずるが、その前処置がなく先天性に過敏性である点、通常のものでないという意味でatopyという語を用い、いわばstrange dis-ease or state ということを表そうとしたわけである。