アトピー性皮膚炎について:白色皮膚描記症、アセチルコリン遅発蒼白反応

 〔同義語〕 内因性湿疹endogenous eczema、 Asthma-Ekzem〔J adassohn 1903]、ベニエ痒疹prurigo diathesique 〔Besnier 1892] 、 frtih- bzw。 spateχsudatives Ekzematoid〔Rost 1892〕、 eczema flexurarum〔Kaposi〕、 neurodermitis disseminata、 konstitutionelle Neurodermitis。

 〔アトピー(atopy)とは〕

 Coca〔1923〕はヒトに特有で遺伝性の先天性過敏症であるアレルギーの1型をアトピーと称し、その抗原をatopen、対応する抗体をreagin〔lgE〕と名づけた。 atopenは花粉・動物毛・真菌胞子・食物のようなありふれたものであり、アトピー素因のある人のみがこれに対するreaginを生産し、湿疹のほか気管支喘息・枯草熱・花粉症[アレルギー性鼻炎・結膜炎]を生ずる。 Sulzberger〔1933〕はCocaのアトピーの概念にもとづいて発症する湿疹をアトピー性皮膚炎〔AD〕と呼称、この患者および家族には次のようなatopic stigmata が高率に伴うとした。

 ①気管支喘息・枯草熱・アトピー性皮膚炎の高度の家族内発生率、②通常の食餌または吸収入抗原〔たとえば卵白・ヒト落屑・塵埃・花粉〕に対する皮内・掻破反応 [即時型反応]の高い出現率、③血液好酸球増多症、④血清中の受動転嫁抗体〔passive transfer antibodies ; Prausnitz-Kiistner 抗体)の高いこと、⑤各種ストレス

 湿度・湿度・外傷・感染・精神的緊張〕に対する異常反応の高いこと、⑥薬剤や異種血清に対する激しい反応。

 〔発症病理〕

  アトピー素因:遺伝形式は不明〔lgE免疫応答に関与?〕。本症患者の皮膚は特有で、蒼白顔面、下眼瞼の色素沈着と皺(Denie's line)、皮膚乾燥化、鵞皮様毛孔性角化、魚鱗癬様変化、四肢端冷感などがある〔アトピー皮膚(atopic skin)〕。これらは根底には皮表低脂質量、不感蒸池(TWL)亢進、単球・T細胞の異常がある。このため皮膚は易刺激性で痰痒閾値が低い。注目すべきは血管反応の異常で、白色皮膚IIX記症(white dermographism)〔皮膚をこすると充血線を牛ぜず、逆に貧血性白線を生ずる〕、アセチルコリン遅発蒼白反応(delayed blanch phenomenon)〔アセチルコリン皮内注射後3~5分で蒼白斑〕、ヒスタミン反応で紅斑の欠如などがみられる。

 2)かかるアトピー素因の皮膚に刺激triggerが加わってアトピー性皮膚炎(AD)少発症する。

 3)皮疹発生のメカニズム:

 ①乳幼児では食餌アレルギー〔卵白・牛乳・大豆さらに穀類など、掻破試験・皮内日い特異的lgE抗体・。特異的IgG4抗体〕の存在は認められるが、除去・投与試験などでADの皮疹と食餌との関係の明らかにできるものは極めて低い〔10%以下〕。またフ3歳をすぎるとこの食餌アレルギーは急速に消失する。なお。 IgE高値例は殆どが気道アレルギー合併例〔患者および家族〕で、ADの皮疹のみの例は殆どが正常値である。食餌アレルゲンはじんま疹〔および気道アレルギー〕と一部接触皮膚炎[口囲・頤・頚部]を生じ得るが、AD全体における役割はきわめて低いと考えられる。

 ②家屋塵内のダニ[house dust mite : コナヒョウヒダニ・ヤケヒョウヒダニ]による遅延型接触アレルギー〔lgE結合ラングルハンス細胞に把握され、その真皮への移仙によりヘルパーT細胞に抗原情報が伝達、サイトカイン分泌〕および一部は即時型アレルギー〔アレルゲンが直接肥満細胞を活性化、ケミカルメディエーターを放出〕による。フケも同様の抗原〔およびダニの食餌〕としての意義がある。動物表皮成分・真菌類・化学物質・線維その他の環境物質も同様意義が考えられている。

 アレルギー関与なく、おそらく T細胞機能異常に基づく免疫不全が基盤にあるとの考えもある〔Wiskott-Aldrich症候群・骨髄移植・AIDSにAD皮疹の併発が多い〕。

 ④①および②により生じた痰痒はきわめて激しく強く掻破を繰返し、これが病巣の滲出性と苔癬化を生じ、これが悪循環となる。

  近年ADの増加を認めるが、環境因子〔都市生活者増加・気密性高温の家屋・排気ガス・接触原の多様化〕が大きく関係していると思われ、それに関連して乳幼児期を経過せず思春成人期で発症する例もやや多くなっている。また逆の関連として、良質の使い捨ておむつの発達によりおむつ部に皮疹の軽い乳幼児例をみる。