苺状血管腫

 

 〔同義語〕海綿状血管腫haemangioma cavernosum ,血管性母斑naevus vasculosus

 〔症状〕生後1~2週から3ヵ月の間に毛細血管拡張症または集簇性紅色小丘疹として発し,3~6ヵ月の間に完成する.苺を半切して皮面においたような,表面顆粒状一分葉状の,軟らかい腫瘍で,硝子圧により縮小かつ退色する.半球状のもの(腫瘤型)と扁平隆起性のもの(局面型)とがある.その後自然退縮傾向を示し,学童期までに大部分が消失してしまう.乳児の1%にみられる.

 〔組織所見〕毛細血管の増加,拡張,および血管内皮細胞の増殖.

 〔治療〕①原則として自然消失を待つ(wait and see policy). 6 -h月すぎても増殖傾向のあるとき,口唇に生じたもの〔自然退縮傾向が少ない〕,他器官に圧迫症状のあるものでは,②冷凍療法〔雪状炭酸圧抵法,液体窒素〕,③軟X線少量照射,④ステロイド少量内服などを行う.

 苺状血管腫の初期像として次の3型が認められている〔肥田野,西脇〕.

 I型:出生時正常,2~3週(遅くとも3月以内)後に虫剌症様紅色丘疹として発し,1~2週で急速に拡大隆起して完成する.この型が最も多い.

 Ⅱ型:出生時すでに紫紅色斑として存在,数日中にその上に糸くず状毛細血管拡張を生じ,10日前後で鮮紅色紅斑となり,次第に拡大,3週頃から隆起し始めて完成する.

 Ⅲ型:出生時は貧血斑,数日中にその中に毛細血管拡張を生じ,以後II型の経過をとる.

 ○〔付〕カサバッハ・メリット症候群Kasabach-Merritt syndrome 〔1940〕:幼少児の巨大血管腫で,その腫瘍内に出血が起こり,ために暗紫色の緊張性腫脹を示す. ここで血小板が多量に消費され〔血小板減少性血管腫(thrombocytopenic hemangioma)〕, DIC症候群〔≪-p. 144〕の一種である.成人では約10%が肝血

  管腫に起こる.少量のX線または電子線照射,ステロイド内服.

 C.海綿状血管腫cavernous angioma〔Lever〕〔付図26-34〕

 柔軟な皮下腫瘍で,その被覆皮面に小紅斑が散在.出生時すでに存在することが多い.放射線は無効で,形成外科的手術を要する.

 D.異型血管腫

 次のような,数種の血管腫を指す.

  1)静脈性蔓状血管腫venous racemous angioma : 皮下・筋組織中に深在する,柔軟で圧縮性に富む,静脈様血管がとぐろを巻いたように蔓状に増殖した血管腫.出生時より存し,血栓性静脈炎反復により静脈結石を伴うことが多い.拍動・コマ音はない.

  2)びまん性真性静脈拡張症diffuse genuine phlebectasia 〔Bockenheimer 1919〕

 :前者の一肢に限局したもので青い膨隆した静脈がみられ,栓塞・静脈結石・出血・潰瘍化・壊疽を伴う.

  3) cirsoid angioma [Conway]:外見は苺状血管腫に似るが,拍動・振戦・コマ音を触れ,頭顔面に多い.動脈撮影で,血管腫内に直接動脈の流入を証明する.

  4) cirsoid aneurysm 〔Conway〕:はじめ僅かの紅斑で,幼~青年期に急激に増大し,周囲に著明な静脈拡張・流入動脈拡張迂曲をみる.拍動・振戦・コマ音あり.