エリテマトーデスの病因論:重複症候群overlap:混合性結合組織病


LEの病因論

  1)古くは結核説[lupusという語はこれに由来]、梅毒説、内分泌障害説、レ球菌・ブ球菌説〔敗血症・感染アレルギー〕。

  2) Klemperer〔1942〕は、全身の膠原線維系のフィブリノイド変性を主体とする膠原病(collagen disease)の一種とした。
 
  3)自己免疫(autoimmune disease)説:種々の自己抗体〔抗核抗体ANFその他〕が免疫複合体(immune complex】を形成し、これが補体を伴って腎糸球体・皮膚基底膜・血管壁に沈着して炎症を生ずる。遺伝素因・免疫異常・紫外線・寒冷・外傷・感染・薬剤などが自己抗体産生、免疫複合体形成に関与するが、とくに免疫学的寛容をこわす引金としてウィルスが強く疑われている。免疫複合体はSLE・DLE両者の病変部に見出され、前者は皮膚・心・腎・関節・骨髄・中枢部神経を、後者は皮膚をtargetとする同一基盤上に立つものと考えられる。

 

重複症候群overlap syndrome

 SLE、 PSS、 DM、 SjS、 RA などの複数の疾患が合併して生じた場合をoverlapという。 sclerodermatomyositisや、次項のMCTDなどと名付けられる重複もあるし、移行・中問型といった疾患的特徴の明瞭でないものもある。逆の発想でいえば、発生病理に自己免疫という共通基盤があり、個体の反応の差、標的臓器の差、引き金の差などによって疾患entityという単位がC人工的に)設けられているともいえ、従ってoverlapというニュアンスより、病態発現の強さの差、極端にいえば自己免疫性疾患という一疾患の多様性ととることもできる。一般にSjSはいわゆるoverlapをしやすく、 MCTDはPSS症状を中心として比較的まとまったoverlapともいえる。抗Ku抗体陽性。

混合性結合組織病mixed connective tissue disease 〔Sharp 1972〕[MCTD]

 SLE・PSS・多発性筋炎にみられる症状が混在し年余に汎って進行する。関節炎〔RA様〕・レイノー症状・ソーセージ様手指腫脹を主体とし、近位筋筋力低下・筋痛・リンパ節腫脹を伴う。皮疹としては脱毛、 DLE・SLE様皮疹、色素沈着〔びまん性・限局性〕、色素脱失〔毛包部のみ色素沈着を残す〕、皮下結節など、その他発熱、漿膜炎〔胸膜炎・心嚢炎〕、腎病変〔糸球体腎炎とくにメサンギウム増殖性〕、呼吸困難〔肺線維症・同質性肺炎〕、嚥下困難、肝脾腫、全身倦怠感。橋本病・SjS を伴うこともあるが、ステロイド剤に良く反応して予後は比較的良い。抗n-RNP抗体・RNase感受ft speckled型抗核抗体強陽性、高グロブリン血症、血沈促進。①複数膠原病の不完全重複、②overlap症候群と同一、③将来一つの膠原病〔とくにPSS〕に進行する未分化膠原病、④独立疾患などの説がある。