乏尿・無尿・尿閉:ミオグロビン尿症


 尿には1日で排泄されなければならない物質(溶質)がある一定量含まれます。この溶質を溶かして体外に出寸ためには、最低1日500mlの水分を必要とします。1日の尿量が250~300ml以下に減る状態を乏尿といいます。

 また、全く腎臓で尿が生成されない状態を無尿といいます。一方、尿は正常につくられ、膀胱にまで流れてきて貯留しますが、膀胱から尿道を通
って外に出せないような状態が尿閉です。

 乏尿、無尿は重大な腎臓の障害、すなわち急性腎不全である可能性があるので、できるだけ早く医師に相談すべきです。体液が減少したような状態になると、例えば、炎天下で水分を充分摂らずに、激しい運動や労働をすると、発汗など腎臓以外で水分が失われ腎臓は体液を維持しようとして尿量を減らすように慟きます。

 しかし、このような時でもどうしても排泄しなければならない溶質を排泄するのに必要な尿量は保つことができるものです。また、このような脱水状態のあとで、かなり水分を摂っても尿量が減るのも、体液の減少が回復するまでのことで、不思議ではありません。

 上の例は脱水状態ですが、乏尿を起こす状態は、これに似た状態がいくつかあります。いずれも腎臓を循環している血液が減少し、糸球体の濾過量が減少するもので、腎前性の乏尿、あるいは腎前性の高窒素血症(検査上、急性腎不全のように、尿素窒素、クレアチニン、尿酸などが上昇)といいます。脱水、出血、ショック、下痢、嘔吐などが原因となります。このとき、通常、尿は非常に高濃度となります。

 これに対し、腎性乏尿は腎臓の尿細管が壊死(細胞の死)に陥った急性尿細管壊死(狭い意味の急性腎不全) によって発疱します。腎前性の原因に対して、輸液などによる水分、電解質の補充が遅れたり、不充分であったりすると、尿細管に充分な酸素の供給がされず、尿細管細胞の死という状態が惹き起こされます。また、抗生物質や造影剤など直接腎臓の細胞に毒性を及ぼすさまざまな物質が知られています。腎性乏尿のとき、尿はむしろ血液と同じ程度の濃さとなります。幸いにして、尿細管の細胞は、再生されますので、急性腎不全の原因を改善または取り除き、急性期を血液透析などでのりきれば、充分回復が期待できます。

 こんなに簡単に急性腎不全を起こすものかと医師に思われている疾患がミオグロビン尿症です。ミオグロビンとは筋肉にある蛋白で、筋肉が壊れると血液中に大量に出てきます。

 これが腎臓の糸球体で濾過されて、尿中に出てきますと、毒性を発揮して尿細管の細胞をいためつけ、腎不全となります。筋肉なんて簡単には壊れないと思われるでしょうが、日頃あまり運動などせず、炎天下で、急にフフソンなどの過激な運動をしますと筋肉は壊れヽ これに脱水などの効果が加わり腎不全に陥ります。ミオグロビンは赤褐色にみえます。運動後にこのような尿が出たときは充分な注意が必要です。

 診断を早期につけ、血液透析などで、急場をしのげば予後は心配ありません。運動をするときは、体調を整え充分に準備体操をして、水分を補給しながら、自分の体力にあった程度の運動から徐々に負荷を強くしていくようにすることが大切です。