脳磁図(MEG)の検査法について

脳磁図(Magnetoebcepharography ; MEG)は神経細胞活動によって電流とともに生じる磁場を測定する、脳機能の検査方法の一つです。1971年に生体磁気計測装置(MEG装置)を用いた初めての脳機能の記録がされています。

脳機能の検査では脳波が一般的ですが、脳波が脳の神経細胞の活動に由来する電気信号を測定しているのに対し、脳磁図はその磁場を測定しています。フレミングの左手の法則にあるように電気と磁場は90度の関係にあるため、MEG/EEGのそれぞれが捉えやすい脳の部分(脳溝の脳回か)が異なることと、電気より磁気のほうが頭皮や骨の影響を受けにくいということ、電流減と測定位置の距離が離れると磁場のほうが信号がずっと小さくなることなどから、脳波と脳磁図では見ている脳活動は同じでも得られるデータが異なってくることは稀ではありません。たとえばMEGのみ、またはEEGのみで見られるてんかん性棘波も多く経験され、報告されています。

MEGはミリセカンド単位の時間分解能とミリメートル単位の空間分解能をもち、また非侵襲的にてんかんの電流減を3次元的に視覚化できる利点を持ちます。現在臨床においててんかんの手術適応検討症例の術前検査を中心として行われています。脳磁図上視覚的に見えるてんかん性と疑われる棘波を拾い、その時に測定された磁場からその磁場の震源地となる電流源(equivalent current dipole; ECD)をコンピュータに計算させ、点として測定されたECDを同じ患者から得られたMRIに重ねます。その結果、てんかん原性領域の局在、SEF(somatosensory evoked field)などの脳機能部位とてんかん原性領域の関係などをより具体的に見ることが可能となりました。

実際には得られたECDの結果と発作症状や認知の経験・報告、統計的結果をあわせて総合的にMEG検査結果を診断します。ECDは点として推定されますが、実際に発作間欠期脳波を示すには最低6平方センチメートル程度の広がりが必要とされており、MEGが高い精度を持っているとしてもひとつのECDでその広がりを知ることはできず、複数ECDの分布をみて判断する必要があります。また脳の深部になるほど空間的な推定誤差が大きくなるためそれらも考慮しなければなりません。

MEGは特に術前検査の一つとして行われることが多いです。一つには保険が開始されるまで高額な医療であったことがありますが、現在では保険も開始され、今後、より検査が依頼されやすくなると思われます。またMEGはてんかんの手術適応同様、その性質上部分てんかんにおいてより適応があります。これはMEGでは焦点が小さい一つの点であるという過程のもとに計算されるためであり、そのため、部分てんかんでより良い結果を出すことができます。

さて、術前検査として既に行われている多くのほかの検査に追加してMEGを行う意味はあるのでしょうか? EEGとMEGは見ている活動が同じでも捉えられるものは異なるため、EEGでは得られなかった情報が得られる可能性があります。また結果を患者本人のMRIにのせて表示でき、また空間分解能がよいため、具体的な発作焦点の位置をMRI上に示したり、発作症状との関係やSomatosensorymotor areaとの位置関係を知ることがある程度可能です。

またMEGは空間分解能に合わせて時間分解能もよいです。このためEEG状両側に独立した焦点がある症例において、左右の伝播の様子からprimary focusを示すことができることがあり、左右の診断がつけられることも稀ではありません。EEG状両側焦点がみられる症例についても手術適応を知るためによい検査であるといえます。

MEGの手術結果との相関性もよく、複数の施設において80%以上の高い一致率を示しています。