脳波・fMRI同時測定について

fMRIが実用化されてまもなく、1993年にはすでにfMRI撮像中の最初の脳波測定の試みがなされています。当初よりてんかんへの応用が眼中にあったことは驚くに難しくありません。MRI撮像中には通常の検査室測定では存在しない様々な脳波上のノイズ、アーチファクトに遭遇します。それらを分類すると次のようになります。1) 環境ノイズ:これはMRIスキャナやその周辺の機器から発生する50/60 Hzのハムノイズや振動ノイズを含んでいます。2) ballistocar diogram:これは心臓拍動による衝撃が逃避状の脳波回路の開口部も同様に振動させ、静磁場を切っていくことによって電磁誘導の法則に従って、脳波回路内に電流が励起されるものです。1.5 Teslaでその振幅は200μVに達することもあります。3) MRI撮像アーチファクト:RFパルス放射と傾斜電磁場電磁石の高速スイッチングによるアーチファクトであり、40.000μV以上にも達します。当初は、脳波とfMRI撮像を交互に繰り返すなかで、3) の巨大な撮像アーチファクト出現部位の脳波は諦め、静磁場中での脳波部分のみをデータにして収集する方法が主流を占めていました。これをinterleaved recording(交互測定)と呼んでいます。しかし間もなく、撮像アーチファクトの中でも同時連続的に脳波を測定しようとする試みが始まりました。その中で現在主流となって実際に応用されている方法としては、小さな利得の作動増幅器をいったん通した後、low pass filterで撮像アーチファクトを歪みなく記録し、そのあとアーチファクト加算波形を脳波から減算し、さらに適応型フィルタにて処理することで脳波を得る方法や、Fast Fourier Transformを用いたフィルタでアーチファクト領域の周波数成分を除去することで脳波を得る方法などがあります。さらにその後、撮像アーチファクトが傾斜磁場パルスの波形の微分波形であることを利用して、それをコントロールすることで常に基線レベルのみで脳波データをデジタル・サンプリングし、結果として撮像アーチファクトの振幅を数十分の一まで減衰させる方法(stepping stone sampling法)も開発されました。このような童子測定技術の進歩に伴い、さまざまな分野にこの方法論が応用されるようになっています。その中において、最も精力的に研究されているのが発作間欠期のてんかん異常波関連部位のマッピングです。