脂肪腫lipoma

脂肪腫lipoma

 半球状に隆起した軟らかい腫瘤で,豌豆大から小児頭大に及び,ときに有茎性となる.背に好発.進行は徐々であるが,思春期・更年期・妊娠時に急速に増大することもある.組織学的に大形の脂肪細胞の増殖があり,被膜で被われる.腫瘤内部に血管増殖を来したものを血管脂肪腫(angiolipoma)と呼び,これは多発することが多く,ときに疼痛があり,また,結合組織増殖を来したものを線維脂肪腫(fibrolipoma)と呼ぶ.女子にやや多く,遺伝性がある.紡錘細胞脂肪腫(spindle cell lipoma)は脂肪細胞閧に膠原線維と紡錘形細胞〔線維芽細胞?〕の増殖するもので中年男子に多く項・肩・背に好発, pleomorphic lipoma はこれに似るが脂胞細胞問に花冠状多核巨細胞・異型巨細胞をみる.切除.

   〔付1〕冬眠腫〔越冬腫〕hibernoma : 肩甲閧・頚・腋窩にみられる硬い皮下結節.組織学的に冬眠動物の冬眠腺(hibernating gland, brown fat)に似,顆粒と中央に核を有す空
胞状細胞が多房状に集まっている〔桑実細胞(mulberry cell)〕.ときに悪性化.

   〔付2〕Bannayan〔1971卜Zonana〔1976〕症候群:大頭症,多発性脂肪腫血管腫,リンパ管腫を合併し,その他発育遅延,運動言語障害,高口蓋を示す常染色体性優性遺伝性疾患.

 肥満細胞症mastocytosis,色素性じんま疹urticaria pigmentosa[Nettleship 1869~Sangster 1878]

 〔症状〕

 1)生後1年頃までにじんま疹発作を反復,やがて全身に爪甲大までの赤褐~黄褐色の斑点ないし丘疹が播種状に多発し豹皮状となる〔幼年型〕.まれに成人に初発〔成年型〕.個疹は幼年型で大きく,成人型で小さい.まれに単発.結節では水疱を頂点に生ずることもある〔水疱型(u. p. bullosa)〕.ときに紅皮症化.

 2)強くこすると線状に膨疹を生じ[大工じんま疹],かつ皮疹部において隆起が特に著しい〔Darier's sign〕.

 3)皮膚潮紅とともに,悪心・嘔吐・下痢・鼓腸・腹痛一発熱・心不安・心悸亢進・呼吸困難・頭痛・けいれん・意識混濁など全身症状を呈することがある.したがって皮膚摩擦・入浴に注意が必要. 2)3)の症状は,刺激により肥満細胞から急速にヒスタミンおよびヘパリンが放出されることによる.

 4)全身性肥満細胞症(systemic mastocytosis):肥満細胞増殖が皮膚のみならず,リンパ節〔腫脹〕,肝脾[腫脹],骨〔粗鬆症・硬化・嚢腫状〕にも存在し,血小板減少性出血傾向を示す.まれに白血病化(mast cell leukemia).

 [組織所見]幼年型では真皮上層に密に,成人型では血管・付属器周囲性に肥満細胞の増殖をみる.同細胞は大形多角形で,トルイジン青異染性〔紫色〕を示す.

 〔分類〕表26-7のように分類, Unna型が最も多く, Rona型がこれに次ぎ,他はきわめて少ない.

 〔治療〕①じんま疹発作はじんま疹に準じ,重症の時にはACTH,ステロイド投与,輸血.②色素斑の治療は,ビタミンCの他,軟X線・雪状炭酸圧抵など.

 〔予後〕幼児型は5~6歳より自然治癒を示すが,成人型は難治.