じんま疹urticaria:人工、寒冷、温熱、日光、心因性、コリン性、および接触蕁麻疹などについて

 〔定義〕一過性〔通常1~数時間〕に経過する、痰痒を伴った限局性の皮膚浮腫。

 〔症状〕突然、境界明瞭な円形~楕円形~地図状のわずかに隆起した膨疹を生じ、痰痒が激しい。その臨床症状により紅色(urt。 rubra)、白色(urt。alba s。 porcellanea)、水疱性(urt。 bullosa)、出血性(urt。 haemorrhagica)、環状(urt。 annularis)、迂回状(urt。 gyrata)、蛇行状(urt。 serpiginosa)、図画状(urt。 figurata)、連圏状(urt。circinata)、地図状(urt。 geographica)などと称する。

 じんま疹発作が1回、あるいはせいぜい数日で終わるものを急性型(urt。 acuta)、1ヵ月以上にわたって反復するものを慢性型(urt。 chronica)と分かつ。

 皮膚を強くこすることにより生ずるものを人工じんま疹(urt。 factitia)または皮膚描記症(dermographia)といい、発赤のみのものをdermogr。 rubra、膨疹形成するものをdermogr。 elevataと称する。重症のものではショック症状、腹痛、嗄声、呼吸困難を来す。

 〔病因〕最終段階の機序は末梢毛細血管の透過性の亢進による血漿の組織内への流出であるが、透過性亢進には次のような機序がある。

 1)Ⅰ型アレルギー:肥満細胞に付着したlgE抗体に抗原が反応すると、肥満細胞魚・肉・牛乳・卵・ソーセージ・里芋・貝・えび・かに・食品添加物〕、薬剤〔抗生物質・サルファ剤・アスピリン・血清など〕、吸入物〔花粉・羽毛・塵埃・香料など〕、体内産生物〔炎症・腫瘍・代謝異常による変性物質〕など。

 2)仮性アレルゲン:ヒスタミンアセチルコリンなどを多量に含む物質もしくは体内でヒスタミンを遊離させる物質による。ほうれん草・なす・そば・たけのこ・里芋、その他脂肪に富む食品、新鮮でない魚・貝・いか。

 3)物理的刺激:

  a)圧迫(pressure urt。)・摩擦〔人工 じんま疹(urt。 factitia)、機械的じんま疹(urt。 mechanica)〕。

  b)寒冷じんま疹(cold urticaria、Kalteurtikaria)・‥寒気・冷水にさらされたとき、あるいは寒気より温気に変わったとき、曝露部位に生ずる。ヒスタミンがメディエーターとなり、皮膚末梢血管拡張による“失血”のため、頭痛、めまい、低血圧性ショック死を来すこともある。クリオグロブリン・クリオフィブリノゲン血症、梅毒性寒冷ヘモグロブリン尿症の際に生ずるものもある。氷片ないし冷水試験管テスト陽性。抗ヒ剤、寒冷に対する減感作療法、冷水・寒気を避ける。

 0温熱じんま疹(heat urticaria、 Warmeurtikaria)…温熱により生じ、曝露部位とは限らない。疸辛・脱力感・流涎・虚脱を伴うことあり。アセチルコリンがメディエーターとなる。

 d)日光じんま疹(urt。 solaris)…日光照射後10~20分で照射部に痰痒・灼熱感のある紅斑、次いで膨疹を生ずる。ときにショック症状となる。まれ。作用波長により6型に分けられる(Harber 1963)。光アレルギー性の型があるが、多くは不明。

 遮光、反復少量日光照射。

 4)心因性:ヒステリー・てんかん・脊髄癆・自律神経失調症

 5)コリン性じんま疹cholinergic urticaria : 温熱・疲労・精神的緊張のようなストレスにより、とくに夕方に生ずる。激痒ある直径lcm以下の膨疹で紅暈を有し、同時に発汗を伴う。大脳皮質安静時の夜間には生じない。手掌足底には生ぜず、エクリン汗管の豊富な部位に生じやすく、これは汗の水分が皮脂と反応して中毒物質を生じ、これが吸収されて毛包周囲の肥満細胞よりヒスタミンを遊離させるという説〔Shelley-Rawnsleyの水性じんま疹(aquagenic urt。)〕になっている。しかしストレスにより中枢を介してコリン性神経が刺激され神経末端でアセチルコリンが分泌される、ないしはコリンエステラーゼ低値が主因となすコリン説の方が強い。比較的神経質な青年に多い。夏季増悪、冬季軽決。

 6)接触じんま疹contact urticaria : 皮表より侵人した化学物質により、該部に生ずるじんま疹。アレルギー性・非アレルギー性あり。気管支喘息・ショックを伴うものをcontact urticaria syndrome という。

 〔組織所見〕真皮中下層のうっ血歐充血・リンパ管拡張・乳頭浮腫・膠原線維膨化・わずかのリンパ球・好中球・好酸球浸潤と核破片。

 〔診断〕①病歴、②皮膚反応〔掻破試験・皮内反応・open patch test ・ Prausnitz-Ktlstner反応〕、③血清lgE〔RAST・ELISA〕、④誘発試験、⑤除去法。

 〔治療〕①抗原および誘因の除去、②抗ヒ剤・抗アレルギー剤投与、③整腸、④特異的減感作、⑤重症〔声門浮腫〕ではステロイド剤。慢性型ではその他、⑥病巣感染の処置、⑦駆虫、⑧変調療法〔ヒスタミン加ヒトフーグロブリン〕、⑨精神的安静。