睡眠障害とてんかんの鑑別


てんかんと鑑別を必要とする睡眠障害には、種々の睡眠時随伴症、その他があります。鑑別の基本は、てんかん発作の臨床像とともに、各睡眠障害についての臨床像を知っておくことです。

<strong>1. 症状が睡眠だけかどうか</strong>

この点は病歴聴取上、重要です。睡眠障害は、原則的に症状は睡眠中だけです。一方てんかん発作は、睡眠中の発作を主訴とする場合の多くに、日中に類似の、あるいはより軽度の症状が出現するので、注意深い病歴聴取が鑑別に非常に有効となります。

ただし、てんかんの約1~3割は、発作が睡眠中に優位に出現する睡眠関連てんかんで、さらにその約半数は、発作が睡眠中だけに起こるpure sleep epilepsyです。

<strong>2. 入眠期の異常症状―睡眠時ひきつけ・律動性運動障害</strong>

睡眠時ひきつけ、律動性運動障害は小児期にみられ、通常自然に消失する睡眠障害です。睡眠時ひきつけは生理的ミオクローヌスの強いもので、運動症状出現時にてんかん性異常脳波が出ないことからてんかん性ミオクローヌスと鑑別できます。律動性運動障害は、頭部あるいは体が前後あるいは左右に激しく律動的に動く症状で、特徴的症状から診断は比較的容易ですが、前頭葉てんかんあるいは偽発作と鑑別を要します。

<strong>3. 徐波睡眠期の異常症状―夜驚症・睡眠時遊行症</strong>

てんかん発作で強い恐怖感に襲われ突然覚醒して大声を上げたり、幼児では母親に抱きつくことなどがあり、このような場合夜驚症との鑑別が必要になります。また複雑部分発作で徘徊自動症が目立つ場合、睡眠時遊行症との鑑別を要します。

夜驚症および睡眠時遊行症は、エピソード中に覚醒させるのが困難で、翌朝にも覚えていません。一晩に複数回のエピソードを持つことは通常なく、また小児期以降は消失します。

てんかん発作の場合、症状の常同性が高くなります。また、一晩に複数回起こったり、思春期以降も残存する場合、てんかん発作の可能性が高いです。

<strong>4. レム睡眠期の異常症状―レム睡眠行動障害</strong>

レム睡眠行動障害は老人に多く、激しい暴力や攻撃的な行動をとることがあります。てんかん発作でも、突然の運動症状により自身や他者が偶発的にけがをしたり、発作後のもうろう状態のときに行動を制止されると反発することがありますが、激しい暴力は少ないです。さらに鑑別点として、レム睡眠行動障害では夢内容と関連した暴力行動であること、覚醒刺激を与えると目覚めさせるのが可能なことがあげられます。覚醒させた際に夢内容を確認することが肝要です。

なお、複雑部分発作の多くはノンレム睡眠時に出現しますが、まれにレム睡眠時でも起こります。

<strong>5. その他の睡眠障害</strong>

まれですが、ナルコレプシーによる日中の睡眠発作が複雑部分発作と鑑別を要した症例や、睡眠時無呼吸のみがてんかん発作の症状であった症例の報告があります。

<strong>6. 夜間発作性ジストニアについて</strong>

夜間発作性ジストニアは、非てんかん性の睡眠障害か、てんかん性かどうか、長く議論されてきました。1990年の睡眠障害の国際分類では睡眠時随伴症として記載されています。しかし近年は、てんかんとみなされるようになっています。