欠神発作重積状態と棘徐波昏迷について


非けいれん性発作重積状態は意識障害を伴わないもの(単純部分発作重積状態)と意識障害を伴うものに分類されます。

意識障害を伴う非けいれん性発作重積状態は、通常のてんかん発作である短い意識消失発作ではなく、突発的に長時間昏迷様状態になるものです。持続は数時間から1週間ときに数週間にも及ぶことがあります。この間動きがなくなり、ぼんやり状態になります。会話ができても内容は意味不明です。この重積状態の頻度はさほど多いものではありません。しかし持続時間が通常のてんかんとは大きく異なり、また昏迷、混乱、行動異常などの精神症状を伴うことがあるので診断的に注意が必要です。この状態を正確に診断することは治療に大きくかかわってくるので臨床的な意義は大きいです。

この重積状態は共通した一つの病態であるとされていますが、この状態が起こる以前のてんかんの既往や脳波上の局在所見で2つに区別できることが多いです。欠神発作(小発作)重積状態及び複雑部分発作(精神運動発作)重積状態です。これら2つの重積状態は臨床的にあるいは脳波学的に違いがあることが報告されていますが、発作重積時の臨床症状や脳波所見のみから両者を区別することは困難なことも少なくありません。

<strong>a. 欠神発作重積状態</strong>

欠神発作重積状態は定型欠神発作および非定型欠神が重積したものであり、軽度から中度の意識障害、不活発、反応遅延を呈します。意識レベルは変動することもありますが、複雑部分発作重積状態と比較すると意識障害は浅いです。言語機能は通常保たれていますが、会話は緩徐で貧困であり、しばしば短い答えをするのみとなります。意識障害の程度により必ずある程度の見当識の障害および健忘を伴います。幻聴、多幸感、幼児性行動、保続思考障害を示した症例の報告などがありますが、このような精神病症状を伴うことは欠神発作重積状態では非常にまれです。

定型欠神発作によるものでは主に欠神てんかんで見られます。脳波は3Hzの律動的な棘徐波複合の連続がみられます。非定型欠神によるものでは主としてレノックス症候群などの症候性全般てんかんの症例にみられ、意識混濁のほか、ときにミオクローヌス、強直発作なども伴います。脳波は3Hzより遅い棘徐波の律動の連続あるいは不規則な棘徐波、さらに不規則な高振幅徐波に棘徐波やてんかんせい漸増律動が混在することもあります。

<strong>b. 複雑部分発作重積状態</strong>

複雑部分発作重積状態は複雑部分発作が重積したもので、Castautらが最初に記載しています。そのあと報告もなく極めてまれな疾患と考えられていましたが、1980年代になり相次ぎ報告されるようになりました。意識障害が主症状ですが、単に意識障害だけでなく、困惑、混乱、幻覚妄想など多彩な症状を伴うことが多いです。持続期間は数時間から1週間以内ですが、数か月という症例も報告されています。この状態は棘徐波昏迷(spike-wave stupor)とも呼ばれています。

複雑部分重積状態には発作が連続的に続いているものと意識が充分回復しないうちに反復して次の発作が起こるものとがあります。Mayeuxらは連続的に続いているものを連続型とし「遷延化した複雑部分発作で多彩な精神症状が連続し、脳波上の連続した発作パターン(二次的全般化あるいは一部に局在性)を伴う」と述べています。これに対し反復するものをサイクル型とし、「反復した複雑部分発作でエピソード中は多彩な症状を示し、エピソード感は発作後の意識混濁を示す。脳波もエピソード中は連続した発作パターンを、エピソード感は発作後の脳波異常を示す」としています。