β‐グルカンは人間の腸管から吸収されない?

 先にも触れたように、キノコの多糖怖が免疫機能を高める成分であった。そして、キノコ由来のいろいろな健康食品(免疫賦活剤)の多くが、多糖体のなかのグルコース(β‐グルカン)を抗ガン作用の詛い文句にしていることはすでに述べた。

 

 しかし、このβ‐タルカンは分子量が大きく、経口投与では人間の消化器官から吸収されにくいという見解がある。

 

 実際に、マウスの実験では、注射と経口投与とではβ-グルカンの効果には差のあることが確認されている。β-グルカンは注射では効果があるが、経口投与ではほとんど効果がないのだ。

 

 たとえば、シイタケからつくられた抗ガン剤のレンチナンである。レンチナンは、シイタケから単糖分離されたβ‐グルカンである。

 

 乳ガンを移植したマウスにレンチナンを注射した場合、その腫瘍阻止率は28%。これに 対し、経口投与した場合は、なんと2%にまで腫瘍阻止率が低下してしまうのだ。

 

 カワラタケから抽出されたクレスチン(PSK)という抗ガン剤も、このレンチナンと変わらない。β‐グルカンであるクレスチンは、国立がんセンター研究所の研究でガンに対する効果がほとんどなかったとされ、ある病院の臨床結果からも「クレスチンはガンに無効」と判定されてもいる。そうしたことから、いまやクレスチンは医療の現場からはほとんど姿を消している。

 

 ただし、クレスチンに抗腫瘍効果がまったくなかっかわけではない。現に、1968年の国立がんセンターの研究では、腫瘍阻止率77・5%を示していた。そうした数字がめったから、クレスチンは抗ガン剤として誕生している。

 

 では、なぜクレスチンがガンに無効とされたのか。その理由は、PSKというβ‐グルカンが注射では効果があ・つても、経口役与の場合は人間の腸管からほとんど吸収されないことにあった。国立がんセンターの研究は、キノコの熱水抽出物をマウスに注射して得られた結果だったのだ。

 

 問題は、「経口投与で果たして効果があるのか」という一点に絞られる。

 

 健康食品は口から摂る。病院での注射による投与で成分が吸収されるのとは訳が違うのだ。経口投与で効果がないとなれば、健康食品の意義は大きく薄れてしまう。

 

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