「抗ガン剤はこわい、しかし必要」というジレンマ

 

 抗ガン剤のなかには、たしかにガンに有効なものもある。代表は白血病の抗ガン剤で、それによって95%が治るといわれている。

 

 ただし、一般に、抗ガン剤が医薬品として認められるには約25%に効けばよいと言われている。残りの75%は抗ガン剤の効果が期待できないにもかかわらず使われている計算になる。こうした人は、抗ガン剤の効果がなく、しかも副作用だけをいただく結果になって

 

 ガン医療の実際を見ると、日本では、不必要なときにも抗ガン剤が使われすぎているきらいがある。ある数字では、日本の抗ガン剤使用量はアメリカの4倍とされている。こうした数字を見れば、言いすぎかもしれないが。ガン医は。抗ガン剤依存症”にかかっていると言いたくなってしまう。

 

 つい最近のことだが、遺伝子診断の結果、小児ガンが発症する可能性がある赤ちゃんに抗ガン剤を打ち、そのために15人の赤ちゃんが死亡するという事件がめった。

 

 生まれたての赤ちゃんの場合、ガンを攻撃するNK細胞がなかったり、免疫細胞が未発達の状態にあ・る。しか七、母乳などから免疫細胞を受けとり、自分でも免疫細胞をつくり、1年か2年のうちに、仮にガン細胞があってなんの治療を受けなくても95%近くはガンを発症することがない。この報告では、そのために死亡する可能性のあった赤ちゃんは3名にしかならなかっただろうと推定している。それにもかかわらず、実際は抗ガン剤を打たれ、結果15人の赤ちゃんが死亡している。小児ガンの学会では、このことの是非で議論が大いにされている。

 

 また、ガンの手術を終わったあとに抗ガン剤を使う先生は多い。理由は、「転移しているかもしれないから、念のために抗ガン剤を使いましょう」といったものだ。

 

 最近、東京大学付属病院で大腸ガン術後、顕微鏡によるリンパ節転移を調べ、なかった161名を遺伝子レベルで検査した結果、転移がありと判断された人が78名おり、そのうち31名が再発している。他方、遺伝子レベルでも転移なしであった83名全員が再発がなかったのである。ガンとまったく決別しか健康な人にも、念のためといって抗ガン剤が使われ、最悪の場合、抗ガン剤の副作用で命を無くしているという現実に、驚くだけで済まされることなのだろうか。これも抗ガン剤依存症の典型例だ。

 

 胃ガンの手術後に抗ガン剤を使った場合、その5年生存率は抗ガン剤を使わなかった患者よりも低いという見過ごせないデータが出されている。そのため、2000年の胃がん学会では、「念のための抗ガン剤投与は研究のための医療であって、証拠にもとづいた医療(EBM=エビデンス・ベースドーメディスン)ではない。