なぜ抗ガン剤には副作用があるのか

 

 ガンの治療として、手術、抗ガン剤、それに放射線が三大療法といわれている。場合によってはホルモン剤を使う場合もある。

 

 抗ガン剤や放射線、ホルモン剤などを手術の前に使うか、あるいは後で使うかは医師の判断に任されるが、抗ガン剤や放射線で問題になるのが副作用である。食欲不振、嘔吐、体重減少、脱毛、白血球の減少といった副作用はよく問題にされ、ガン治療の大きなネックになっている。

 

 とくに、抗ガン剤の副作用が患者さんを苫しめる大きな問題になり、副作用のひどい人になると、「ガンで死ぬのじゃなくて、副作用で殺される」という人まで出るありさまである。

 

 いま使用されている抗ガン剤には、2つの流れがある。1つはキノコのような天然由来のもので、免疫の増強に主眼が置かれて開発されている。これには副作用は少ない。もう1つはガン細胞を直接叩くために化学合成されたもので、これには強い副作用がある。

 

 そして、化学合成された抗ガン剤のほうに切れ味が鋭いものが多い。切れ味が鋭く、しかも副作用がなければ言うことはないが、切れ味が鋭いほど強い副作用があるという悲しい現実になっている。

 

 では、なぜ化学合成された抗ガン剤に副作用があるのか。

 

 抗ガン剤の歴史を振り返ると、毒ガスとして知られているマスタードガスの一種であるイペリットをそのルーツとする。最初につくられた抗ガン剤はナイトロミンといい、イペリットよりも作用のおだやかなナイトロゲンマスタードからつくられている。

 

 忘れてならないことは、抗ガン剤は、増殖の激しいガン細胞の特徴をとらえ、細胞分裂と遺伝子の合成を抑えるためにつくられた毒物だということだ。その結果、増殖の盛んな正常な細胞組織にまでダメージを与える結果になる。

 

 増殖の盛んな細胞組織には、骨髄、腸の粘膜、皮膚の毛根の細胞などがある。だから、白血球の減少、食欲不振、嘔吐、脱毛といった副作用が出てしまうのである。

 

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