レセプター型チロシンキナーゼについて:c-fms、VEGF、Grb2


造血初期に作用して造血幹細胞から造血前駆細胞や各系列前駆細胞へと増殖・分化を促す因子として幹細胞因子(SCF)は極めて重要です。SCFのレセプターは源癌遺伝子c-kitです。そのほか、造血に関与するレセプター型チロシンキナーゼとしては、M-CSF(monocyte colony stimulating factor、単球/マクロファージコロニー形成刺激因子)のレセプターであるc-fms、血管形成に必要なVEGF(vascular endotherial growth factor)やアンギオポエチンのレセプターであるfit-1、fik-1、tie1、tie2などが知られています。

これらのレセプター型チロシンキナーゼは、モノないしヘテロ二量体化によって、キナーゼドメインが自己リン酸化されることで活性化されます。キナーゼはレセプター自身をリン酸化し、そのリン酸化チロシン残基にシグナル伝達分子をリクルートしてリン酸化し、さらに下流へシグナルを伝えていきます。このときシグナル分子のなかでリン酸化チロシン残基を認識するタンパク質モジュールがSH2ドメインとPTB(phosphotyrosine binding)ドメインです。シグナル分子としてはそれ自身が酵素活性を有し、リン酸化によって活性化される分子、例えばホスファチジルイノシトール3リン酸(PI3)キナーゼ、ホスホリパーゼC、GTPase-acitivating protein(GAP)、チロシンホスファターゼSHP(SH2-protein tyrosine phosphatase)-1、2が知られています。また酵素活性を有さず、別のシグナル分子群をリクルートするいわゆるアダプター分子、ドッキング分子も存在します。

Grb2はGTP交換因子SOSタンパク質とSH3ドメインを介して会合しRasを活性化する極めて重要分子です。活性化Rasはraf、MEKを活性化し最終的にMAP(mitogen activated protein)キナーゼを活性化します。Ras-MAPキナーゼ経路は細胞の増殖、アポトーシスの抑制など重要な役割を担っています。SHP-2もアダプターとして機能し、Ras-MAPキナーゼ経路の活性化に関与します。さらにGrb2に会合するGab-1、2もRas-MAPキナーゼ経路の活性化に関与するアダプター分子です。