Kancera社のHDAC6阻害剤がセルジーン社のACY-1215(多発性骨髄腫治療薬)を猛追


エピジェネティック酵素(epigenetic enzyme )であるヒストン脱アセチル化酵素6(histone deacetylase 6;HDAC6)を阻害し、がん細胞遺伝子の活性を抑制する新しい化合物群(new class of compounds )が、Kancera社によって発見されました。HDAC阻害薬はがん治療で大きな効果をもたらしますが、重度の副作用を引き起こすことがあるため、臨床使用では大きな制限を受けます。そのため、医薬品会社はこの酵素ファミリーのなかから高い選択性を示すHDAC阻害因子を見つけ出そうと躍起になっています。Kanzeraが選択的HDAC6阻害剤を発見したことにより、医師はHDAC阻害剤を用いて重度の副作用をもたらさずにがん治療をできるようになるかもしれません。

さまざまなタイプのT細胞リンパ腫( Tcell lymphoma)の治療薬として、2つのHDAC阻害剤がすでに市場に出回っています。これらの阻害剤はHDACファミリーのいくつかのメンバーに作用し、嘔吐や心血管リスク上昇などの副作用を引き起こします。HDAC6の選択的阻害剤はこれらの副作用を軽減する一方で、癌細胞に対する活性を維持します。

選択的HDAC6阻害剤の思わぬ発見は、寄生虫病(parasitic disease)の後生的な治療標的を見つけ出すEU出資のプロジェクトで偶然起こった出来事です。Kanceraの阻害剤は、競合薬であるACY-1215と比べて、HDAC6酵素に対してより高い選択性を示すことが、実験室でのテストにより明らかになりました。また、KanceraのHDAC6阻害剤はin vitroでもがん細胞を消滅させることがわかりました。

ボストンの Acetylon Pharmaceuticalsにより開発されたACY-1215は現在、多発性骨髄腫( multiple myeloma)の治療薬として早期臨床試験(フェーズ1b)段階にあります。2013年7月、Celgene(セルジーン)社はAcetylon Pharmaceuticalsの買収オプションを獲得しました。

Kanceraは今回発見した阻害剤の特許出願(patent application)に向けて動いており、多発性骨髄腫などの癌治療における有効性をさらに調査していきます。HDAC6とACY-1215、果たしてどちらが勝つのでしょうか。今後の展開が楽しみです。