抗精神病薬には習慣性がありますか?

 抗精神病薬を乱用しても「気分が「イになる」ことはまずありません。抗精神病薬は病気でない人が飲んでも高揚感や多幸感がくることはありません。これらを売りさばこうとしたその筋に通じた患者を受けもっかことがありますが、私は彼らにいつも次のように言っています。「抗精神病薬を買いたいって人が現れたら、その人にこう言ってやりなさい。トーリー先生がもっと余分にあげるよといってたよ。この薬がほしい人は精神科の病気がある人に違いないって」と。

 抗精神病薬の習慣性についてはまだよくわかっていません。身体がしだいに抗精神病薬に慣れてしまうということはないので、飮むにつれてもっと多量の薬が必要になるということもありません。また、薬をやめても、ふつうは禁断症状は現れません。ただ一つ例外としてクロザピンがあります(後述)。統合失調症に対する抗精神病薬は、糖尿病に対するインシュリン、あるいは心臓発作に対するジギタリスとまさしく同じで、それぞれの器官(脳、膵臓、心臓)の機能をより正常なレベルに回復するために身体が必要とする薬なのです。

早期治療は有益ですか

 最近の研究では、統合失調症の早期治療は臨床的により良好な予後をもたらし、逆に治療の遅延は不良な予後をきたすことが示されています。国立精神保健研究所のリチャードーワイアット博士が統合失調症の経過に関する三一もの研究を再分析し、「抗精神病薬を用いた初発の統合失調症患者への早期介入は、長期経過を良好にする確率を高める」と結論づけています。先に引用したり、バーマンらも統合失調症の初発病相の患者をしらべ、若年層の患者に限っては、「(治療開始前に)長い病的経過があると、回復により時間がかかることがわかった」と同様の結果を報告しています。アイルランドでの未治療の統合失調症患者の研究でも、「未治療統合失調症は、進行性の経過を示し、最終的には、長期経過においていちじるしい無力化にいたる」と指摘しています。精神科医はできるだけ早い段階で患者の治療を開始しないと、不良診療行為とみなされる可能性があることを、これらの研究は示唆しています。